会長挨拶

 第56回日本動脈硬化総会・学術大会を、2024年7月6日(土)~7日(日)に神戸国際会議場において開催させていただきますことを、大変光栄に存じ、鋭意準備をさせていただいております。

今回のテーマは、「コードされた情報から動脈硬化を読み解く」とさせていただきました。動脈硬化性疾患は、心疾患や脳血管疾患の基礎的な病態として重要であり、高齢化社会を迎えた今、その重要性はさらに増してきています。動脈硬化性疾患の基礎疾患として、家族性高コレステロール血症(FH)は、その病因遺伝子の研究から血中コレステロールの代謝が明らかになり、病態解析、さらに治療法の研究が推進されてきました。FH研究が、この分野の基礎研究や臨床研究、さらには薬剤開発を推し進めてきたと言えます。近年、PCSK9のFHの病態への関わりが明らかになり、標的とした治療薬も複数開発され、既に臨床応用されています。また、ANGPTL3、Lp(a)やアポリポプロテインC3など、これまで低分子化合物では標的とできなかった分子についても、抗体や核酸医薬などの新しいモダリティを用いて薬剤開発がなされてきています。その中で、重篤な動脈硬化性疾患を引き起こすFHホモ接合体に対しても、LDL-Cをコントロールできる時代が来ています。

 本大会では、欧州動脈硬化学会会長、Imperial College LondonのKausik Ray先生、Monash UniversityのStephen Nicholls先生、Amsterdam UniversityのAlbert Wiegman先生を特別講演に招待しており、脂質異常症、動脈硬化症、臨床研究などについて、世界最先端の話題を提供していただき、議論を行いたいと存じます。動脈硬化の基礎疾患、病態、リスクコントロール、疫学、病理などについて、「コードされた情報から動脈硬化を読み解き」、医師、研究者、管理栄養士、臨床検査技師、薬剤師、看護師、医療系企業などの多職種の先生方の新しい知識や技術の交流の場となり、有意義な会になれば幸いです。

2023年12月吉日

斯波 真理子
(大阪医科薬科大学 循環器センター)

平田 健一 
(神戸大学大学院医学研究科
内科学講座 循環器内科学分野)